[ 2024.11.1. ]
328号-2024. 11
当社では、新入社員に対して、ビジネスに不可欠なコミュニケーション能力を強化するための独自研修を実施しています。具体的には、「日本語検定3級(高卒レベル)」および難関中学入試問題を活用した読解力テストを自己診断の一環として課しています。このテストの結果、不合格となった社員には「読売新聞社社説」を150字以内に要約する訓練を6ヶ月間実施し、論理的思考力と表現力を磨いてもらっています。
例年、新入社員の約40%がこのテストで不合格となるものの、これらの研修の目的は単にテスト合格を目指すことではなく、顧客との円滑な意思疎通を実現するための基礎的な能力を養うことにあります。特に中小企業においては、顧客との信頼関係が事業の存続や発展に大きな影響を与えるため、相手の意図を正確に汲み取り、適切に応答する能力は不可欠です。
現代の若者におけるコミュニケーションスキルの低下は、広く社会全体が直面している課題です。背景には、読書量の著しい減少があり、それが若者の語彙力や読解力の低下に直結しています。2023年の「第68回学校読書調査」によると、小学生の1ヶ月あたりの平均読書冊数は12.6冊、中学生では5.5冊、高校生になるとわずか1.9冊まで減少しています。さらに、高校生の43.5%が1ヶ月間に一冊も本を読まない「不読者」という現状が示されています。また、大学生においても、1日の平均読書時間がわずか22.2分であり、53.5%の学生が「読書時間0分」という結果が出ています。年齢が上がるにつれて読書習慣が失われていく現状は非常に憂慮すべき問題です。
読書習慣の喪失は、語彙力や理解力の低下を招き、それがビジネスの場面でも顕著に表れます。顧客とのやり取りにおいて、コミュニケーションの齟齬がトラブルを引き起こすことがあり、その解消には相手の意図を的確に把握する読解力が不可欠です。そのため、当社では新入社員に対して、徹底的な読解力強化の研修を行い、業務に必要な基礎的なビジネススキルの習得を支援しています。
しかし、読書習慣が乏しい若者に対し、読書を強制することは容易ではありません。現代の若者は、テレビやスマートフォンに多くの時間を費やし、読書に時間を割く余裕がほとんどありません。
特にスマートフォンによるYouTubeやSNSへの依存は顕著であり、これは現代社会におけるライフスタイルの一部となっています。とはいえ、ビジネスにおける自己成長のためには、読書や学習の時間を意識的に確保することが不可欠です。当社としても、社員が自ら学ぶ機会を作れるよう、適切なサポートと環境整備を進めています。
また、「努力すれば必ず報われる」という考え方も、ビジネスの世界では必ずしも適用されないことがあります。たとえば、適切なターゲティングを行わず、無闇に努力を重ねても、期待する成果には結びつかないことが少なくありません。たとえば、顧客が活用していないプラットフォームで広告を展開しても、売上にはつながりません。逆に、いくら洗練されたウェブサイトを構築しても、明確な目的が設定されていなければ、問い合わせや契約には結びつかないでしょう。したがって、努力の方向性を正確に見極め、その上で適切な努力を重ねることが成功の鍵となります。
当社では、社員一人ひとりが正しい方向に向かって努力できるように、日々の業務においてフィードバックを行い、改善を促す環境を提供しています。単に努力を重ねるだけではなく、努力の質とその方向性を見極めることが極めて重要であり、そのためのサポート体制を整備しています。
また、社員の成長が会社の成長に直結するという信念のもと、人材育成に惜しみない投資を行っています。どの企業においても、社員の能力向上は長期的な視点で企業の競争力を高める原動力となります。社員一人ひとりが「会社の看板」であることを自覚し、顧客との強固な信頼関係を築き上げるためのスキルを研鑽し続けることが、今後ますます重要になると確信しています。
アーバン企画開発グループ相談役/合同会社ゆいまーる代表社員
三戸部 啓之