203号-2014.6.25

[ 2014.7.2. ]

203号-2014.6.25

 

当社では4月1日で社員数が106名になった。
うち今年の大学新卒は4名、中途入社は6名の計10名だった。
正社員比率は51.8%の55名である。当社のガイドラインではその比率は40%であるから、前期に比して約10%上昇したことになる。

 

 

もちろん仕事が増え業務が複雑になってきたから、それなりの社員数が必要となった。いたし方がない面もあるが、我々の賃貸不動産管理業界では労務比率のアップは経営を圧迫する最大要因になる。「人が足りないから」で採用すると「ムリ・ムダの業務改善がなく」終わってしまう。管理戸数が増えれば当然様々な業務がそれに比例して増加するが、生産性、効率性の指標を入れないと単に肥大化した組織になってしまう。労務比率が高くて粗利が比例しなければ倒産の坂道を転げ落ちる。スリムな筋肉質体質が求められメタボ体質は寿命を縮める。

 

一般的に管理戸数が増加すれば社員は増加する。管理統括、新規開拓業務に特化し、時間制限のあるパート社員にはできない業務を正社員が担当しなくてはいけない。

管理会社の基幹業務のひとつであるクレーム・トラブル処理等がある。入居中のクレームや滞納リスクも管理戸数に比例するから、それにかかわる社員の負担は大きい。当社では平均入居期間が37ヶ月、クレーム率6%なので月300件が入電する。さらに駐車場におけるトラブルが加算されるから月350件前後となる。一回の訪問で済むクレームもあれば、騒音や共用部分のトラブルのように入居者間で感情的にもつれてしまうとかなり難航する。

騒音トラブルなどは解決に至らないと、予期せざる退去や内容証明合戦、最悪の場合は訴訟沙汰にもなる。管理業務に必然的に発生する滞納者は借地借家法という入居者側に強い見方がいる為、かなりの期間滞納をしないと法的に退去させるのは難しい。その督促も夜討ち朝駆けが必要だし、社員の張り付けにもコストはかかる。今期より事業部制をとった為、夫々の損益がより明確になってきた。当然「利益を守る部門」だけではなく「利益を作る部門」への強化が課題になる。まず営業部門の人員強化策だ。

当社の2014.4.1現在の営業社員比率は42.4%(45名)だが、うち新卒と新人が8名含まれるので今期の即戦力という点からは34.9%(37名)になる。ご他聞にもれず当社にも“パレートの法則”がぴったり当てはまる。「20%の社員で80%の実績を作る」となれば、その比率は6.6%(7名)に過ぎない。経営トップとしては営業社員比率を60%、優秀営業社員比率を当面10%に持って行くためにも、優秀な社員の採用は欠かせない。特にガッツのある若い社員が必要だ。計画では今年度から5年間、毎年新卒社員を5名、第二新卒を3名、中途入社社員を2名、計50名。パート社員を年間6名、計30名の採用を続ける予定だ。2020年にはパートを含めた総在籍社員数は約180人、営業社員比率は52.7%(95名)で当初の目論見通りになる。そのうち優秀社員を20%に持っていく為には約20名を優秀社員として育てなくてはならない。
事務系社員は採用時に失敗することは少ないが、営業社員だけは全く予測不可能だ。

面接で「彼はいい線行っている」と採用したが、後は泣かず飛ばずで、実績を上げない社員も多い。会社創立以来26年、数多くの面接をしてきたが、営業社員の採用ほど未だに自信を持つことができないし、人様に自慢できるこれといった判断尺度もない。
アナログ的だが「彼は顧客に好かれる要素を持っているか?」「ストレス耐性があるか?」「行動的か?」位しかない。採用した途端、社員教育費用も年間総額500~700万はかけているし、受講希望者は講座内容によっては100%補助する体制もある。本人のやる気さえあればサポートする社内体制と雰囲気つくりは中堅賃貸管理会社ではどこにも負けない自負はある。しかし、如何にせん、営業社員には「センス」がものを言う。前にも書いたが、これだけは教育では難しいし限界もある。そこで「そこそこのレベルの社員でも受注できる」システムつくりが必要だ。

「新規顧客開拓力の劣る社員」「クロージング能力の劣る社員」にはルート営業を主体としたテナント営業や定型的パターン業務を、「ヒアリング能力の劣る社員」にはメール、問い合わせ反響営業を担当させることになっている。そのチャンネルと路線敷きが所属リーダーの責務になる。「読み、書き、そろばん」は一定レベルのスキルはあるはずなので、営業がダメでも社内の他の業務につけることで、社員のパフォーマンスが上がれば良しとしている。

「人材→人財」が企業の究極目標だし、「人在→人罪」が労務費増加のボトルネックになる。様々な社内教育コンサルタント会社が勧誘に来るが、採用して効果があったためしがない。教育は社長以下経営幹部の責任で行うもので「他社に丸投げするものではない」と思っている。
しかし教育内容次第では「ブラック企業」の烙印を押されかねないし、何しろ当の本人が取り組む姿勢が問題だ。OJTでも優績社員に担当させても教えることが苦手な社員も多いから頭が痛い。

ブート・キャンプ:新兵の訓練施設をご存知だろうか? 米国海兵隊の訓練施設で有名になった。この代表的企業といえばリクルートや戦略コンサルティング会社のマッキンゼーがある。新卒者に人気のある会社にリクルートがある。大学のクラブの雰囲気そのままのノリで有名だ。しかし、反面厳しい会社でもある。結果がすべてなのでリクルートに入ってみたものの、力を発揮できない人間にとっては、長く残ることは難しい。マッキンゼーの場合はさらに過酷で、社員は基本的に同じ役職には3年程度しかいられず、3年経っても上位の役職に昇進する見通しがなければ退職を迫られる。「UP OR OUT」昇進か退職かという文化が当たり前のものとみなされてきた。
マッキンゼーとリクルートを卒業した社員に成功する人が少なくないのは、このように、「ブート・キャンプ的環境」で厳しく鍛えられた経験がある故なのである。

若い従業員の労働力を搾取するだけの会社は問題外だが、非常に仕事が厳しくてもその業務を通じて大きく成長することができる会社はブラックではない。外見から見ればこれらの企業は間違いなく「超がつくブラック企業」に違いない。
入社1~2年の社員は毎晩12時、1時は当たり前だ。もちろん睡眠時間4時間という過酷な労働条件を納得するだけの報酬もあるから問題も少ない。

それでも応募者は多いし、それも東大をはじめとした一流大学ばかりだ。
この辺に社員教育の本質が隠されているのではないだろうか?最近では社員教育に「厳しさ」を避け、お客さま扱いしている企業がもてはやされている。
さらに「サービス残業」「うつ病対策」を踏まえた過剰なコンプライアンスの強調がある。

企業改革コンサルタントやセミナーではそれが本流になっているが、違和感を持つ経営者も少なくないだろう。企業の本質は「戦いだ!」生き残る為にも社員の戦力化が必要なのだ。戦闘意欲をなくしたり、戦力外通告を受けた社員は退場(卒業)させなければならない。かえって集団自体を危機に陥れるからだ。もちろん疲弊した戦闘員は部隊(会社)が収容し除隊か復帰させるかを判断する。それが機能集団という企業の本質なのだ。その為にも成長を実感させる仕組みが必要だ。

  社長 三戸部 啓之