211号-2015.2.25

[ 2015.2.25. ]

211号-2015.2.25

当社には「すぐに飛びつく社員」と「指示待ち社員」がいる。周りの様子を見て結果予測の上、飛びつく「ひらめ社員」ならまだ良い。釣りをする社員なら理解できると思うが、「ひらめ」は食い込みが悪く、早合わせは禁物だ。

 

一般に「ひらめ40」といい、食いついてから直ぐに合わせるとかからない。40を数えるくらい十分飲み込ませてから合わせる必要がある。

 

一般に高級魚は合わせが難しい。鯛など一旦食いついても異物があると直ぐに吐き出す。そのタイミングに上手く合わせられないと釣りにならない。はぜやキスは直ぐ飲み込むので釣りやすい。
鯛やひらめはくわえた瞬間が微妙なので、あたりの取り方が釣りの醍醐味にもなる。魚の世界では其の手の魚は味覚以外に姿、釣りの難しさで評価が高いが、社員にはいただけない。

業務に限れば、まずは全員「はぜ・キス」社員になってもらいたい。事の是非はともあれ、まず飲み込んでもらいたいからだ。特に若い社員は尚更だ。

向かい傷や致命傷を恐れるならば、カワハギ型の社員でもいい。別名「えさ取り名人」といわれる魚だ。おちょぼ口だから一気に飲み込めない。ついばむようにえさに挑む。身の危険が迫るまではえさ取りを断念しないしつこさもある。仕事に置き換えれば期待できる社員になる。「まず食ってから考えろ!」は頭でっかちでは通用しないことを意味する。あれこれ考えても結論は出ない、其のうちにタイミングをずらしてビジネスチャンスもなくなる。

関心曲線というものがある。時間の経過とともに購買意欲がなくなることをさす。特に賃貸物件探しというものは、第一印象でほぼ決まる。物件の印象、担当者の態度や言葉使い、説明の仕方、仲介店舗の印象もある。この初動動作を見誤ると回復は難しい。

はぜ・キス社員の欠点は「向こう合わせ」が多いということだ。こちらで竿を置いていても、向こうで勝手に食いついてくるからだ。社員に置き換えても自爆が多くなることになる。大量採用、大量退職の時代なら「はぜ・キス社員」で組織維持は成り立つ。代替えがどんどんできるからだ。しかし、昨今のような少子化で採用にも教育にも会社側の負担が考えられないほど増えている時代には「はぜ・キス社員」にも「ひらめ型・カワハギ型社員」の要素が必要になった。

闇雲に突進するのではなく「現状分析・計画・行動・結果検証」というサイクルが求められる。
特にネットによる事前情報の把握が進んでいる状況では、常に他社や他物件との競合が避けられない。自社の物件知識はもとより競合予定物件の知識は必須になる。自社のメリットばかり強調しても辟易するばかりで商談は一向に進まない。かえって強引さが目立ち腰が引ける。これを前時代の上司は「追い込みがない」「ガッツがない」とかで営業マンの意識の問題にしてしまう。旧軍の「突撃精神・玉砕精神」と変わらない。これを「プッシュ営業」というが、今はコンサルティングを主体とした「プル営業」が成果を挙げる近道だ。しかし、これは大変手間がかかる。号令一下「やれっ」ではすまない! 個人の性格や行動パターンを踏まえ、進捗経過ごとにアドバイスと応援が必要になるからだ。

当社には様々な社員がいる。その正の部分を捉えればダイバーシティーになる。様々な経験や考え方の社員が居てこそ多様性ができ、同質化した組織よりイノベーションもおきやすいからだ。しかし反面、負の面も見逃せない。「言わなくてもわかる、命令一下、集団で行動に移せる」ことができず、時間をかけて合意まで得なくては成らない。つまり頻繁にコミュニケーションを取る事が必要になる。同質化していない組織では、全員のベクトルを一致させる為に目標を明確にし、其の意義を理解させる必要もある。そこではリーダーシップのあり方も変わる。「フォローミー」ではなく「フォローユー」の感覚が必要だ。

リーダーは「不満のない、働きやすい環境つくりと責任を転嫁しない心構え」が必要になる。組織構成員が認めたリーダーが求められる。いわゆる民主的組織のリーダーというわけだ。
しかしこれは米国型組織の一面を捉えたものに過ぎない。敗戦による旧指導部体制の反動でといわれるが、かの国での厳しい結果責任を負わされている点が看過ごされている。
かって旧軍の指導部である「陸軍参謀本部」「海軍軍令部」で責任を取った高級参謀は皆無に等しく、責任は全て現地部隊が取らされていた。又前例踏襲型で急激な変化に対応できない点と失敗事例の隠蔽体質があり其の教訓が生かされていない点が問題になった。知識偏重型だが其のリーダーは愚民が選んだリーダーではなく、賢人が選んだリーダーであったことだ。
学業優秀なだけでは足らない。我々の組織の命運を託すに値するリーダーである事が求められる。旧軍の秀才は米軍から見ると「日本軍の将軍は無能だが兵は勇敢で優秀だ」という評価になった。当社の店長クラスもこの評価レベルではいただけない。

更に「直ぐに飽きる点」も問題だ、だから中々継続改善できない。待ちの姿勢や問題点をえぐらず、新しいことに取り組むことは経営資源の浪費につながる。花火のように一旦発火すると騒ぎ出すが、それもすぐに自然鎮火する。何か問題でも起これば、前に指摘したじゃないですか!と対岸の火事に近い言い草だ。その社員はそれで満足かもしれないが、当社ではダメ社員に違いない。
同じ業務を毎日続けていればバカでもない限り問題点に気がつく。しかし気がつくのとそれを改善してやり続けるのでは大きな差がある。

あるセクションでは管理ソフトの「ISP」を使いこなせば様々なデータ収集や業務のスピードアップが図れるのに、何も考えず、何の疑問も持たず淡々と言われたとおりの事務をこなしていた。業務量の増加に応じたソフトが必要と稟議が上がった。勿論保留にした。導入後、3年以上もたっているのに、このざまだ! 導入責任と活用責任、業務責任はどうなっているか再度問いたい。

当社の欠点は何か?すぐ安易な解決策を取り入れることだ。一番頭を使わず簡易な方法は社員やパートを増やすことだ。今、持っている経営資源を有効に活用するのが経営の基本だということを忘れている。考えて、考えて、やってみて、初めて其の経営資源の限界を知り次の手を考えるべきなのに、汗もかかず手も使わずに簡単に捨て去る。其の基準も明確ではない。社員がある部門では忙しく他の部門では暇をもてあましているのに誰も指摘しないし、配置替えもしない、時間調整もしない。自己都合だけで勤務できる会社は、全国広しといえども当社だけだろう。

緊急に人的資源の適正配置を実行するべきだ。優秀なパート社員が居るのに使い切れていないのも問題だ。口をすっぱくして言っているが社員の役目は何か?社員はルーチン業務をすることではない!イレギュラーな、手間がかかる業務をする為にいるのだ。更にパート社員のパフォーマンスが最大に発揮できるように環境を整えサポートすることだ。3年以上も同じ業務に居れば誰でも一定のレベルになる。そこで自分が優秀などと考えたら、勘違いもはなはだしい。ある程度のことがマスターしたらパートに委譲せよ!つまり経営資源の適性配分をする力がないリーダーが多すぎるのだ。

他社見学を行っても、業務の性質が違うからあれは当社では導入できない!でいつも終わりだ。
新しい感覚で業務を見直すことができるのは、慣れを排することしかない!自分自身のスキルアップの為にも刺激を与えることだ。そういうのを「活性化している組織」という。

活性化している組織はいつも緊張感で満ちている。だから改善意欲も問題意識も高い。

 社長   三戸部 啓之