サポート通信 088号2018年10月1日発行
従来の賃貸経営の常識が覆される?!
昨今、不動産テック化が加速しています。不動産テックとは「不動産」と「テクノロジー」の造語で、究極的には「人を介在させない不動産ITシステム」の事です。
周辺機器のIT化で希望地区の物件をネットで検索しGoogleのストリートビューで周辺環境を確認。24時間365日物件の問合わせができ、 VRで内部を事前に見て、案内は提携したタクシー会社かUBERで予約します。内覧後はパソコンの画面で説明を受けて契約。鍵はコンビニで受け取る事になります。ほぼすべてネットでの対応が可能になるのです。
不動産は「所有するものではなく運用するもの」という考え方でITによる省力化・全方位性です。この背景には不動産の金融化、グローバル化した投資マネーの流れがあります。
30年前のバブルやリーマンショックも同様に、経済の大原則である需給関係に基づく価格変動は起こらず、マネーの行き先次第で価格操作されます。ITにより属人化がなくなれば均一商品となり、投資対象として最適になります。少子多死社会は数年後に迫り、生産労働人口が激減する事が明確になっていますので、その対応策として省力化、非属人化は企業存続の要諦でもあり「不動産テック」は避けられません。
さらに、政府は高齢者の個人資産1500兆円と言われる資産の放出を景気浮揚として色々と画策しています。将来の年金不安を背景に投資不動産への誘導が流行でしょう。しかし景気浮揚と年金財政の破たん回避のあだ花としてD社のように破たんしたサブリース会社もあったわけです。一時的な仮需要を作っても本来の実需に基づかないものは破たんの原因になります。個人投資家も一瞬にして莫大な借金地獄に陥る事となってしまいました。表面的な利回りが判断のポイントになれば当然賃料を上げるか、金利を下げるしかありません。そこに賃料保証を加味すれば外見上問題はないシステムができてしまいます。このサブリースの問題はシステムだけが先行し「入居者=人」が不在したため起きた事例です。
少子化と言う利用者の減少は、賃貸経営に従来とは違った利用方法や知恵が求められることを意味します。民泊もその一例ですが、場を提供して利用者を募るという、シェアリングエコノミー(場を共有)や、アイドルエコノミー(隙間時間を共有)という考え方です。その利用方法は多様化し、今後同じようなビジネスもたくさん起こるはずです。
今後様々な利用形態や居住環境を自ら提案しなければ、消費者(入居者)から見向きもされないでしょう。かつては「情報の非対称性」が仲介ビジネスのポイントだったのですが、AI化が進めば仲介会社の役割はなくなり、物件を磨くことや、メンテナンス、クレーム処理をする管理会社のみが残る事になります。我々管理会社や貸主も「対岸の火事」ではなく、知恵の勝負になってきたことを表しています。
代表取締役 三戸部 啓之