258号-2019.1.25

[ 2019.1.5. ]

258号-2019.1.25

先月、2018年度宅建試験の合格発表がされた。当社の受験者では34名の内3名が合格した。内訳は女性2名、男性1名であり合格率8.8%であった。合格者を経験年数でみると、1年未満1名、3年未満2名、3年以上0名である。同時期に当社にバイトで勤務していた学生が僅か6ヶ月で合格している。これから見える事は、資格の必要性を切実に感じず、単に会社の方針だからと受験しているのが如何に多いかだ。特に5年以上在籍している社員に多い。契約にあたり「重要事項説明」を要すると明文化されてあり、無資格者は不動産の仲介に当たっては契約をすることが制限されているのだし、この業界で禄を食んでいる以上、必須の資格なのだ。しかし、それでも本気になれない理由は何だろうか?

「忙しくて本を読む時間が取れない」「疲れて本を開く気がしない」「やっても業務に貢献する事が少ない」「営業力と資格が正比例していない」「先輩が取得していない」「取得しても所得にあまり影響しない」等々であろう。纏めれば「時間が作れない」「モチベーションの有無」に集約できる。時間が作れないという物理的理由は、細切れ時間の活用と効率化で解決できる。工夫が必要だ。そこに慣性の法則を入れれば盤石だ。

人には万人平等に24時間が与えられている。どんな天才でも地球上の重力下ではそれを延ばすことはできない。アインシュタインの特殊相対性理論の「光速度不変の原理」である。となれば与えられた時間が同じなら、効率化を追求する為の一般的な「無理無駄」をなくせばいい。

一寸自分の一日を振り返ってみたらいい。そしてシーン毎に時間を分解してみる。朝起きて食事まで、食事してから出勤するまで、自宅から勤務場所まで、昼休み時間、退社から帰宅迄、手待ちの時間がどのくらいあるかを点検してみるといい。通勤時間一つを取ってみても、電車を待つ時間、バスを待つ時間、乗車している時間何をしているだろう。
意外と「ぼーっと」している、「何気なく電車の吊り広告を見ている」「スマホでゲームをしている」「ラインやフェイスブックで乗車時間中やり取りしている」のではないだろうか。

メールチェックもその都度やり取りするのではなく9.00、12.00、15.00、18.00、22.00で問題はない。電池の使用量も減り無駄な時間も無くなる。ゲームなら一日1時間以内と決めればよい。

通勤時間帯も乗り換えや駅待ち時間があり、合計すればバカにならない時間数が確保できる。
大学受験の時を思い出せばいい。寸暇を惜しんで時間管理をし、時間を捻出したはずだ。

小職の場合で恐縮だが、中学からの付属校でしかも軟派校だったため、この手の受験勉強はしたことがなかったし、ノホホンと中学~高校を過ごしていた。好事魔多し、D社のサラリーマン時代、新任管理職研修で「月3万円を本代に投資せよ!」と言われた事がある。当時、月3万円とは30冊を読めという事になり、一日一冊の読書量を課せられた訳だ。

営業職でもあったため、強制された訳ではなく休みは月1~2回、出勤は午前7時、退社は午後10時が通常だった。今では考えられない超ブラックだが実に15時間勤務である。

睡眠時間は平均5時間。帰宅すればそのまま寝床に直行、珠の休みは一日中家でゴロゴロしていたわけだから、この読書の課題には相当面食らった記憶がある。当初は「営業を知らない人事部が何を言っているんだ!」と反発したが、ハードからソフトに向かう営業の過渡期でもあった点から知識の重要性を鑑み仕方なく挑戦する事にした。そこで見つけたのは隙間時間の活用だ。先の各シーンで5~10分の隙間時間は必ずある。これを合わせると実に90~120分になった。毎日続ければ一ヶ月2700~3600分、時間に換算すれば45~60時間が取れる。
新書なら平均200ページだから一時間40ページとして5時間、月に9~12冊が読める事になる。ハードカバー版なら新書の1.5倍だとして6~8冊が可能だ。本社の指示には到底到達しなかったが、隙間時間を作るという意識はサラリーマン生活をやめ独立しても維持できた。

「慣れというものは恐ろしい」続けていると、本が手放せなくなる。どこに行っても本を携帯しないと後悔する。時間を無駄に使ったという意識になるから、余計自分を規制する好循環サイクルになってきた。こうなればシメタもので読書を渇望するようになる。一種の強迫観念でもある。

言い古された言葉だが、「意識は習慣を作り、行動は習慣を作る、習慣は人格を作り、人格は運命を作る」と言われるが、人格ができたかは首をかしげるが、間違いなく習慣はできた。一例を挙げたが「時間がない」という理由は成立しない、要は本人の時間管理次第になる。
我々は、何かともっともらしい理由をつけ言い訳をして自分を納得させながら、物事を先送りしている。「後でやろう」「今日は疲れているから」「いつかそのうちに」等々だ。

「更に何れ(いずれ)の時とか待たん」今やらなくていつやるのだ!という中国の老僧の言葉もある。今やらなくてもいい理由を探すのはなく、今自分がすべきことを本気になって取り組むことが、今この時を大切にすることになる。
TVで有名な予備校のカリスマ講師H氏も「いつやるか、今でしょ!」と言っている。

更に、脳科学的にも35歳をピークに記憶力や継続力がなくなる事が証明されている。両方とも脳にストレスがかかるからだが、脳内伝達物質である「ストレスホルモン・コレチゾール」が原因である。心のバランスを整える伝達物質である「幸せホルモン・セレトニン」が分泌されればいいわけだが、これは「早寝早起き」「軽い運動」「日光を浴びる」事で分泌が促進される。規則正しい生活をすれば自ずと分泌され、これが「モチベーション」にも影響される。前向きな姿勢にもなる。

人間の脳は自分の言った事ややった事は忘れない。しかも脳は主語(誰が)理解できないので自分が口にした言葉を全て自分ごととして覚えてしまう。ネガティブなことをいうと自分の行動をネガティブな方向に制限することになる。

其の為にも方向を同じくする同行の士を集め、お互いが切磋琢磨する事も有効だ。現に数年前の新卒が仲間を募り宅建試験に合格したことがある。だが、残念ながら後が続かなかった。
特に未取得の先輩たちは「ふーん」とばかり半分他人事のようにふるまったからだ。
彼らは「落ち癖」がついている。受験する事で自分の怠惰・劣等感をごまかしている。
不合格は明白だから事後の不合格理由も準備している。放置すると「腐ったリンゴ理論」と同じく落ち癖が蔓延してくるので、昨年から直前模試で30点(50点満点)以下は受験させない事にした。丁度この時期は、賃貸シーズンでもあり10月の第3日曜を一日潰されることは痛いこともある。

受験料の払い込みは、8月なので受験禁止となれば個人の財産権を侵すとまでは行かないが、問題があるという意見もあったが押し通した。以後全体の合格率云々まではないが、きちんと準備してから受験するようになったと思う。

業界も徐々に整備され、様々なシーンで資格が要求されることになっている。最近では賃貸住宅の管理受託にも別の資格である「賃貸住宅経営管理士」の重要事項説明が義務付けられてきた。 
まだ努力義務だが既存業者の反発下においては快挙と言えるだろう。今後所定の資格がなければ益々不動産取引には関与できない事になるのは明白だ。安穏としている無資格者の危機感に訴えたい。

                                                                                     社長   三戸部 啓之