[ 2020.4.1. ]
273号-2020.4.25
口コミ対策が急務になっている。
ここでいう口コミとは、ネットに書かれた評価の事を指す。「GOOGLEのクチコミ」がそれだが、その投稿自体が大きな販促の要因になってきつつある。ほとんどの入居希望者は希望物件をネットで検索し概要を把握する。地域、駅名、間取り、設備、築年数、家賃と絞り込んでいく。そのうえで希望物件に合致するものがあればその物件を仲介している不動産会社に行くことになる。
公表されているデータを見れば、60件の該当物件を抽出し、自分の希望に合ったものを絞り込んでいくことになる。最終的に2~3件に絞り込むと、今度はその不動産会社を見て判断する。
不動産会社の概要、社長のプロフィール、店舗の概要、担当営業社員のプロフィール等を閲覧している。そこでも判断基準は、きちんと対応してくれそうか? 胡散臭い会社ではないだろうか?である。だから、営業員の顔写真は必須になり、特に女性を前面に出すことは非常に効果的だ。
このように、いくつかの関門をクリアーして来店するわけだが、物件数5%の競争倍率から更に不動産会社の選別を経て来店している厳しい環境下にある。勿論、来店前には営業社員との物件詳細における問い合わせや賃貸条件のメールや電話でのやり取りが介在している。
このやり取りも入居者の判断基準になっているも、昨今の特徴だ。問い合わせの返答時間の長短、的確性、メールの書き方も重要なイシュー(ISSUE)になる。
この辺の対応がまずいと、入居希望者からはマイナスの評価の書き込みがなされることがある。
入居申し込みがあっても審査でお断りしたりすると、相手からの攻撃に晒されることもある。
入居審査を条件に「申し込みを受け付け、お断りすることもあります!」と承諾を得て審査している。年収を確認する確定申告書や源泉徴収票等様々な書類を提出していただき、その労苦を考えずに事務的にお断りすると、トラブルにつながることが多い。当社の担当者が常識的対応をしても以下のような専横的な理不尽なクレームをつけられることもある。
入居をお断りした申込者からの審査落ちに納得いかず、当たり散らすような内容のクチコミだったり、入居者からの当社の問い合わせ対応に納得がいかず、対応が遅い、こんな会社の管理物件からは出ていきたい、といった内容のクチコミがそれだ。
このような書き込みがあると、社内では「検証会議」を開催し関係者から経緯や対応の是非を確認している。その時点で当社側に至らぬ点があれば改善し、貴重な実践教育の場ととらえている。
勿論、好意的なクチコミも多い。無事にご成約頂いたお客様からの成約に至るまでの当社従業員の柔軟な対応への御礼のクチコミなどがある。こんな投稿があると、社員のモチベーションは上がり職場の雰囲気も良くなる。
そして、評価が高くなると、悪意を持ったネットユーザーからはすぐ反論の書き込みがあるから始末に悪い。いいクチコミは全部サクラで、社員総出でいいクチコミを書いているといった誹謗的なクチコミが書き込まれたりする。
ここで注意しなくてはいけないのは、反論してはいけない事だ。反論すれば相手の思うつぼで反論、再反論のスパイラルに陥る。そして他の無責任なネットユーザーも加わり炎上する事になり、収拾がつかなくなるからだ。精神的にストレスのたまることだが、沈静化を待つしかない。
今迄の調査からは、悪意のクチコミ投稿者は、「入居審査落ちの嫌がらせ」「ネットクレーマー的な入居者」「いい加減な入居者を送客する業者」である事がほぼ判明している。対応策として弊社の顧問弁護士と「業務妨害で損害賠償請求」も検討したことがあるが、沈静化してきたので放置する事になった。
募集物件を掲載する大手ポータルサイトは、現在この口コミ評価を重視しており、低評価の会社には忠告もある。この評価自体が低いと問い合わせ件数も如実に減少してくるから、ポータルサイトからの意見よりも自社独自の判断で改善を試みているのが実態だ。
しかし、最近はこの口コミに対する問題点も指摘されている。
問題になったのは「食べログ」における店の顧客評価だ。ポータルサイト側の評価基準も不明確で「ヤラセや競合店からの妨害的書き込み」が判明した。主要な集客ツールである口コミが逆に顧客からの信頼を失うことになった。これには販促コンサルタントの介在もある。
ネット時代の申し子という「口コミ」が新しい消費者の評価基準になりつつあるにもかかわらず、不本意な使用の仕方で信用を失うのは残念だ。明らかに悪意なものには運用会社による削除や掲載不可も必要だろう。
そもそも、消費者側からの情報発信というツールがなかった時代には、売り手側からの一方向的な情報しかなく、周りの知人やガイドブックでしか情報を入手することができなかった程、少ない情報で判断していた。だから、「あたりはずれ」も多かったはずだ。
今では、宿泊するにも、食事するにもまずネットで検索し、口コミを見て判断するという事が一般的になったので、意に反した結果は少なくなっている。物事には両面があるように逆手にとって攻撃の手段とする輩も出てきた。これはネット社会の脆弱性ともいえる構造的問題だ。発信者側の真実の証明ができないのだ。
しかも彼らは匿名性という隠れ蓑をまとっている為、言語責任を追及できない。何を言っても責任が追及されないといえば歯止めが利かなくなるのは当然だ。「言いたい放題」の仕儀となる。「サングラス効果」というか自分をさらけ出さずに行動でき、他人に成りすますことが可能だ。対面では言えないこともネットでは過激な発言も出てくる。
表現の自由は公共の福祉や秩序の制約下にある。良識的な自制が根底になければならない。フェイクではない事実に基づいた発言が基底になければそもそも民主的社会は成り立たないのは自明だ。虚言、暴言には厳しい姿勢が求められる。今後この辺もAIに置き換えられ、投稿者の属性や言い回しの特徴から常習者を排除することも可能になるだろう。ディープラーニングで評価項目も数千単位になり精度も増し、消費者の特性に合った最適なプランや場所も提示できるリコメンド機能も一般化するだろう。
そういう時代がもう目の前にある。AIによる評価が一般的になれば、口コミという評価は不要になり消費者の選択肢もより真意に近づく。その頃には不動産業界もかなり進化していることは間違いがない。
社長 三戸部 啓之