[ 2021.4.1. ]
285号-2021.4.25
昨年は2000年の就職氷河期の再来と言われるぐらい、コロナ禍で企業経営環境も厳しく、並み居る大手や優良企業が赤字を計上しリストラも始まった。反面こういう時期こそ、経営が許されるなら優秀な学生を採用する絶好のチャンスだとも考え4名増員の9名になった。
職種を問わず全業種が厳しい経営環境の中にあって、当社も安全圏にいるわけではない。
ワクチンの投与が政策的優先課題として実施され、従来のような臨床試験も厳密にされず経済優先思考でなされているが、副反応という危険性も見逃せない。
結果的に「遠慮なければ近憂あり」になりかねない。しかもワクチンが投与されても抗体有効期間は6ケ月。ワクチン投与率が70%を超えないと集団免疫ができないという。日本国内で言い換えれば、抗体有効期間に8820万人に接種を完了させるという事になり、絶望的だ。
人生における幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じるかわからないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないという喩の通り、万事塞翁が馬と言える。全世界の首脳がそろって「ルビコン川」を渡ったのだ。
様々なリスクを抱えながらこのような状況下において,経済維持政策が次々と出されている。
「GO TOトラベル」をはじめ経済活性化や雇用維持のために政府からの各種補助金・給付金がある、ポストコロナでその財源の回収には増税しかない。膨大な補助金等を増税で補い、軟着陸するには余程大幅な経済成長を図るしかないが、これはかなりの難問だ。当面国債の発行で乗り切るしかないが、対応によっては経済環境が永遠に浮上しないことも考えられ、金利の変動で天文学的な負債を次世代に残すことになる恐れがある。
そのような先の見えない状況下にもかかわらず、又コロナウィルス対策も十分ではない中で、多くの反対や危惧を踏まえて7月には東京オリンピックが強行される。天文学的経費をかけた有史以来の「無観客オリンピック」となりかねない。
ポスト・オリンピック後の社会経済状況はどうなるか不明だが、コロナウィルス蔓延の状況次第では、「それ見た事か!」と予測通り識者からの舌鋒鋭い批判の嵐となる。政権の退陣にもつながり、益々経済は混迷の度を深める。個別銘柄の株価の二極化が進んでいる。株価純資産倍率(PBR)が5倍以上の高PBR企業は昨年末から36%増加で全体に占める比率は21%、一方PBRが1倍を切った企業は6%増え全体の比率は23%と解散価値のある企業となっている。
高PBR企業と低PBR企業との格差は一気に広がった。業種を問わず、デジタル化などの構造変化に対応してビジネスモデルをどれだけ転換できるかで勝ち負けが分かれていると分析されている。
1試合に10塁打を打つ野球用語に例え、株価が10倍以上になった企業を「テンバカー:Ten Bagger」と呼ぶらしい。日本でもセンサーや測定機器で有名なキーエンスや医療情報サイトのエムスリー等152社がテンバカーでカナダ、米国に続き世界で5番目に多い。まだまだ見捨てたものではない。
ポストコロナ時代に社会に必要とされる企業と、そうでない企業に対する投資家の選別はこれからも続く。幸いにも当社では、現在までの処、新型コロナ感染の影響は顕著な形では現れていないが、今後の推移次第では楽観を許さない。識者によると経済が従来の状況に戻るには2025年になるだろうと予測されているが、それまで持ちこたえる企業がどれだけあるかだ。我が業界でも仲介専業の不動産会社は苦戦を強いられるはずだ。ITを駆使し非対面に早く切り替えた不動産会社はデータから見ても著しい業績の低下は見られないが、従来型の対面営業をしていた会社は厳しい状況に置かれている。当社は2年前からIT専門部署を設けてネットにより集客を手掛け、昨年度からはデータを読みこむRPA(ROBOTIC・PROCESS・AUTOMATION)を導入し省力化を図っていた。その効果が徐々に出てきており、新型コロナウィルス禍での非対面接客でもスムーズに移行できた。
入居者の退去が少ないという点は空き室が少ないという事であり、仲介業務を主体とする部署は来店客に紹介する物件がない事になり、仲介に関する売り上げが減少する事になる。又、それに伴う原状回復費用の発生も減少し工事関連売上も減る事になる。出回る好物件が少なくなり、物件元付会社は物件情報をクローズし自社内で仲介完結しようとする。仲介会社には死活問題になり、来店客に対しても強引な営業手法が問題になる可能性もある。
管理会社としてもコロナ禍が長期化すれば安閑としてはいられない。雇用環境が悪化する事で給与所得が減り賃料の滞納につながる負のスパイラルに陥る。殆どの不動産会社が採用している保証会社も経営が悪化するはずだ。最悪の場合は倒産につながり、かつてのリプラスショックの二の舞になる可能性が高い。
消費が減ると生産が減り、雇用が減り、所得が減るという悪循環サイクルがこのまま継続すると国の財政事情は益々悪化しインフラ投資、社会保障にも影響が出て、社会不安や犯罪の増加につながってくる。人々は「内向き姿勢」にならざるを得なくなり経済は悪化の一途をたどる。富裕層は国外に脱出し貧困層のみが残り治安は悪化し、国家財政は破綻する。この悲観的シナリオが現実のものになる可能性が高くなっている。
コロナ禍で「働き方改革」も一気に進んだ。従来のメンバーシップ型雇用からJOB型雇用の変化だ。何年勤務したかではなく、何ができるかが問われだした。同時に成果型報酬制度の導入もある。
リモートワークが一般的になると労務管理も変化がみられるだろう。教えてもらうのが当然だった時代から自ら自己投資して学ぶ時代になる。政府もリカレント教育に本腰を入れだした。社員間格差も激しくなるし、当然だった年功序列型賃金や役職もなくなる。一芸に秀でた職人集団を管理するような組織形態が必要になるだろう。従来の愛社精神をどう位置付けるかも課題になる。福利厚生制度の見直しもある。ポストコロナ時代は令和維新に等しい大変化の時代が到来する。その予兆を踏まえ変化に対応できる企業のみが生き残れるはずだ。
ウィズコロナは「レスの時代」の到来ともいえる。ペーパーレス、ハンコレス、転勤レス、会議レス、出張レス、残業レス、対面レス、通勤レスだ。今まで何の疑問も感じなかった事が当然のように消去したのだ。コロナがチャンスと変わるのだ。デジタル化に一番遅れた業界と言われる建築業界や不動産業界でも取り組みが始まった。当社でも昨年からコロナ感染の影響から、内定者の研修や入社後の研修にも従来とは異なった非対面型の研修が主体となってきた。ZOOMが一般化した事により遠隔研修を簡単に導入する事が出来た。特に在宅勤務が一般化されており、新入生もそれに準じた研修になっている。
座学は通信教育の導入で、今年度は「不動産キャリアパーソン修了試験」に合格してもらう事にしている。これは、我々業界が取り入れているもので、新人中堅社員を対象にするものだ。当社ではこれを先取りし、内定者に入社までに合格を義務付けているもので、「業務の心構え」から「不動産の基礎知識」と内容は宅建試験と重複する部分もあるが、最低限知っておく必要があるものだ。
12~3月までの時期は一番内定者が気の緩みやすい時期でもあり、そのまま4月入社を迎えると気持ちの切り替えに時間がかかるからだ。世情厳しい中でそれなりの気構えを持って入社してもらいたいのだ。
大変化の時代にあたっても「ゆでガエル現象の社員」は多くいる。これらの社員を如何に覚醒させるかが、企業幹部の役目になる。その為の試行として社員の新陳代謝は必要だ。効果的なのは新卒社員を毎年採用する事で、先輩たちへの刺激効果は大きい。
ものになるまでにその費用と手間は中小企業にとってバカにならないが、経営の許す限り採用は継続していきたい。その意味もあり当社にとり今年は大幅な新卒増員となった。
会長 三戸部 啓之