[ 2023.10.1. ]
315号-2023. 10
アーバン企画開発の第35期が5月に終了した。アーバン企画開発管理は決算月が7月だが、100%子会社にしたことで、決算月を変える意味はなくなった。その為、子会社の決算月7月に合わせて株式会社アーバン企画開発も5月から7月に変更した。その為、第36期は6~7月の2ケ月での決算となった。第37期は8月から翌年の7月ということになる。
第35期通期のグループ売上高は45億円、営業利益は9726万だった。前34期に比べ売上高は+7700万、営業利益は▽10200万だった。決算から見た課題は粗利率が、30.6%から29.1%に落ち、労働分配率が54.5%から59.6%に上がったことだ。人件費7.8億(5.4%増)一般管理費4.3億(3.7%増)となった。建築売上げも7.7億と横ばいで、リノリースを含めた建築請負の伸び悩みが主たる原因だった。
人件費は岸田首相の最低賃金政策を受けて当社でもかなりの賃金改定を実施した点と、定年退職者による退職金支給が理由だ。それに加え、社員の福利厚生の一環として社内クラブの設立補助、リゾートトラストの会員権のバージョンアップ等一般管理費の増加も見逃せない。
これらにコロナ禍で2年前から一気にIT化が進んだ電子契約をはじめ、情報一元化するため社内SNSとしてのkintone、施工管理が一元化できるANDPAD、人事情報や社内稟議、給与情報を一元化するjinjer、位置情報を含めた営業管理ソフトのcyzen等、導入後2年近く経過したロボットによるデータの入力、集計を行うRPA、導入後20年以上たつ賃料管理と入居者管理を行うi-SPのバージョンアップなどの費用も含んでいる。更にホームページの全面リニューアルもあった。昭和世代としては中々横文字のITソフトは原理を理解するだけでも頭の回路がヒートアップする。その点若い社員は自然に何のてらいもなく取り入れるから凄いものだ。その世代の格差は大きく、齢、後期高齢者となった身ではついていけない事も多くなってきた。
第36期は実質2ケ月で売上高7億5578万、営業利益▽4127万で終わった。前期の実績と比較すれば売上高+5229万、営業利益64万減になった。累計管理戸数は6752戸、積水ハウス不動産他2568戸、計9320戸、駐車場管理は5206台だった。
月次決算が一般的な中でたとえ2ケ月の決算でも黒字化することは経営トップの使命であり、通期で利益を出せば良いと考えれば、どうしても脇が甘くなり、組織統制が緩慢にならざるを得ない。
アフターコロナでは倒産件数がうなぎ上りだが、全て売上減少要因が占めている。当社でも喫緊の課題は営業部門にあるが、まだまだコロナ禍の負債を引きずっている。非対面が原則だが新規顧客開拓をしない理由にはならない。特に夏季の新規訪問は体力減退とストレスがある為、なるべく避けているのが現状だ。特にベテラン級がつたない先入観から腰が引けている。行きやすい既存客だけ訪問するとか、他部門からの紹介のみを当てにするとかでお茶を濁している。模範となる先輩社員も苦労が多く成果が見られない新規訪問よりも社内紹介等、待ちの行動をとるから猶更だ。
勿論当社と付き合いのある既存客は最重要な財産であり軽視するべきではないが、それは社内的にも専従の社員が張り付いているので、新規開拓要因である部署は本来の新規開拓に専従するべきなのだ。
資料つくりや余り意味のないパワーポイントつくりでは、営業活動をしているとは言えない。まして、雨が降っているからと理由をつけて終日事務作業で社内にいるようでは、何の営業職かわからなくなる。勿論従来の直接訪問は難しいが、電話セールス、セミナー、DM、紹介依頼、ルート等様々な手法がある。営業成績は顧客との面談時間に比例する。統計的には営業会社では一日3時間が最低と言われている。それをクリアするには一日の新規面談訪問5~10件、アポイント2件が必要だ。不在客もいるから新規訪問件数は2~3倍の15~30件は必要になる。この3時間には移動時間や、資料つくり、その他のデスクワークは含まれない。
当社でのデータでは一日平均30~60分と話にならないレベルだ。これでは到底計画数字は達成できない。しかし残念なことに当の本人はそれでも一生懸命やっているつもりだから問題なのだ。本来拠点長がその辺をきちんとチェックしていれば、課員との齟齬もなくなるはずだが、自分も外訪している関係上、指示やアドバイスが伝わっていないことが多い。朝のチェック、帰社時の日報チェックがされていれば、かなり是正されるはずだが、中々できていないのが現実だ。グループごとに営業事務がいるが、雑用に終始させ本来の機能がないから、指示確認が把握できていない。
本人のモチベーションも上がらない。本来なら拠点長は、部下への指示を毎日営業事務に確認させるべきなのだ。拠点長が、帰社後その結果を聞き新たな指示をするべきなのだ。それが部下の教育になる。リーダー・拠点長の役割と範囲が自覚されていないといわざるを得ない。巷間言われる「報告.連絡.相談:ほう.れん.そう」は組織把握上の基本なのだ。更に「三現主義:現場を見る、現場で考える、現場で指示する」が必要なのだが、机上で判断することが多く、的確な指示やタイミングを逃さず出しているとはいいがたい。当社ではこれらを「躾:しつけ」と言っているが、中々日常レベルに落とすことができていない。よく言えば担当者の自主性に任す、悪く言えば放置しっぱなしである。これでは、昭和の時代にあった「俺の後姿を見て覚えろ!」「わからなければ自分で調べろ!」となってしまう。令和の時代には通用しないほど、今の若者は受け身だ。言われたことさえ満足にできないレベルなら指示と確認がなければ、とんでもない結果になるのは明白だ。これでは、本人も営業の面白さを実感できないだろう。
どんなに高い技術力を持ち、素晴らしい製品を開発したとしても、それを売ることができなければ企業としては成り立たない。貴重な研究を成し遂げたとしても、それを多くの人に知ってもらい、使ってもらわなければ、社会に与える影響は限られたものになる。営業力は、人生において、社会において、成果を残すために必要不可欠な力なのである。
また営業は達成感を味わえる仕事でもある。顧客の「ありがとう」に直接、接することができるのが営業担当者の役得だ。お金をもらって感謝される最前線に立つ営業担当者は、お金には代えられない心的報酬を得ることになるのである。この顧客からの報酬が何とも言えない達成感をもたらしてくれる。よく知られているように『マズローの欲求5段階説』にある、他人からの承認欲求は上位にあり自己実現欲求につながる心理的プロセスだ。これがヤリガイにつながり、ますます自己のレベルアップになる貴重な経験を積める職種だということだ。もちろん、売上や利益という数値目標があることによって達成感が味わえるという側面もある。
職種を問わず全ての仕事に目標はあるわけだが、簡単に数値化できる営業の目標は、達成/未達成が明確なことがそれを後押しする。それなりの心理的負債は常に課せられるが、「山登り」と同じでそこに行くまでの過程は苦しくても、山頂に到達した達成感や充実感は何物にも得難い本人だけが体得できる醍醐味と言えよう。この「目標を立て、その進捗と結果が明確になる」という事実は、営業担当者のモチベーションにおいて非常に重要なことである。
人間は目標を持ち、その達成度が明確になるとき、ついつい頑張ってしまうものだ。スポーツやゲームと同じである。
そして自ら目標を立て、そこに向かって自ら努力していく能力、つまり「目標設定力」と「自己発働力」は、プライベートにおいても充実した人生を実現するために必要な能力である。この力を、営業活動を通じて身につけていくことができるのである。営業に対する偏見はすぐに捨て去るべきだし、企業側も「企業の先兵」である位置づけをもっと前面に打ち出すべきだろう。
会長 三戸部 啓之