198号-2014.1.25

[ 2014.2.12. ]

198号-2014.1.25

当社の受験者は14名、内合格者は2名だった。その結果、宅建主任者資格者は49名になった。パートさんも含めた従業員93名の宅建主任者資格保有率は49.4%と約2人に1人が持っていることになる。我々の業界ではダントツだろう。県内の不動産業者で5名以上の宅建主任者を抱え従業員10名以上となれば該当する会社は7000社の1.5%、105社、横浜市、川崎市内の業者に換算すると60社に満たないだろう。その点、当社の外見上の業務スキルは合格かもしれない。しかし今年度の社内合格率14.2%は全国平均以下、決して褒められたものではない。

更に当社の正社員宅建保有比率は68.7%、パートさんの資格保有比率36.3%で考えると、表面上、正社員の資格保有率は良いが、肝心の仲介系営業社員が45.4%と取得者が少ない。
また受験回数で見ても、三回以上の受験者は10名、内入社3年~5年が6名、6年~10年が4名だった。通常、宅建資格取得に費やす時間は350時間といわれている。受験教科書は約600頁の教科書一冊と過去問題集1冊ですむ。周辺関連資格の平均勉強時間をある調査から見てみると、一級建築士、土地家屋調査士 1500時間、不動産鑑定士 1800時間、税理士 2500時間、司法書士 3000時間、新司法試験(法科大学院修了)8000時間となっている。宅建の出題範囲もこれらに関する広範囲のものだし、時間量から見て初級・基礎レベルの試験ということができる。決して難易度の高い試験ではないし、業界がこぞって国家資格「○○士」への格上げを安易に政治運動化しているのは首を傾げざるを得ない。まず、我々はそのような位置づけにある試験だという認識を持つ必要がある。つまり、業務に携わる社員にとっては最低不可欠の資格だということができる。

だから、独身社員で30歳未満の社員の合格者がなかった点と仲介営業系正社員での資格保有数が問題だ。家庭を持たない独身社員は、一日24時間自由に費消できる「選択権」を持っている。その「時間財産」は年齢とともに劣化し、10代と20代30代の時間財産は間違いなくデフレ傾向になっているはずだ。その貴重な財産を無為に使用する事は本人の自由だが、必ず後日悔やむことになる。その辺を早く気づいて奮起して欲しいものだ。
勤務期間が長期にわたる社員ほど中々合格できないと言われている。当社では入社3年以内に宅建資格は取得するように指導しているが現実はかなり難しい。社内の受験対策や模擬試験でも積極的な姿勢は感じられない。不合格の社員全員が、社命だから参加することに意義があるような態度でもある。

カラ元気だけはいい社員もいる。成果発表大会で全員の前で、年内合格を宣言したのに3年経過後も未取得である社員もいる。それなりの理由があると思うが「宣言」は公的ミッションである。安易な撤回は許されない。しかし宣言しない社員よりもその意気込みは買いたい。ベテランになるほど仕事量が増え、中々自分の時間が取れないし、宅建資格と営業実績が連動していないことも大きい。そういう先輩を見ていれば新入社員は、取得に対するモチベーションは萎えてくるのも確かにある。宅建業法上、宅建主任者による「重要事項説明義務」が課せられている以上、未取得者はある一定の業務上の制約があるし、不動産業務における基礎知識習得認定が公的に認められている点は大きい。

それにより資格者としての更なる知識の習得に励むだろうし、5年毎の更新条件も課せられている為、一定レベルの知識は維持でき、しかも本人にとっては自己のキャリアアップの為のマイルストーンの一つにあるのは間違いがない。更に当社でも上級推奨資格として、「ビジネス法務2級」「ファイナンシャルプランナー」「不動産コンサルティングマスター」を設けているが、宅建主任者合格者が数年のうちにそれらの資格を取得しているのは、自己のマイルストーンとしてきちんと自覚しているからであろう。

企業寿命30年説がある。成功したビジネスモデルも30年そのままでいれば環境変化に適応できなくなるからだ。グローバル化などで変化の速度が増せば、企業の寿命は更に短くなる。
一つの会社で定年まで勤め上げる・・・そんな会社任せのキャリアは通用しないと考える社員も増えてきた。今日の働き方で明日も幸せかは分からない。以前のような万人に「ベストな共通解」はもはやない。そのような状況を反映して、日本経済新聞(2013年12月16日)でも「スキルアップに自己投資する人が増えている」と報道されている。総務省の就業構造基本調査によると、職業訓練・自己啓発を自発的に行った有業者は2012年に1371万人、2007年に比して約132万人増えた。逆に勤務先が実施した職業訓練・自己啓発を受けた人は約32万人減った。会社が人材育成投資を控えている分、自ら対処しようとする姿勢がうかがえる。会社側の要求としても、それは納得できる。言うまでもなく組織の根幹は人材だ。環境の変化に適用できるビジネスモデルの作成と構築は企業存続の要諦だし、それを担う社員の育成も急務だからだ。しかし、それに応じた人材は中々社内にはいない。それを育成する時間やコストもない。

基礎的スキルを持った社員とそれを応用できる社員のみが必要とされる人材になる。当然中途採用も活発化するし、反面それに対応できない社員は淘汰される。雇用の流動化は世界的な流れだし、間違いなく国内でもいずれ実施される。この流れを社員はしっかりと自覚しなくてはならない。「明日はわが身なのだ」。賃貸業界に限っても貸主目線で「新婚さんのみ~子供はお断り」「高齢者お断り~外国人お断り」「礼金2ヶ月、敷金2ヶ月」「退去時の原状回復費用は全額入居者負担」だったが、いまやそんな条件をつければ、入居者の問い合わせは全くなくなる。募集方法も激変した。賃貸を扱う業者は「隠居仕事」だったが、最近当社でも担当する男性社員は35歳が限度である。つまり「頭でっかちでフットワークが悪くなる」からである。それまでに宅建資格や関連する資格を取得し、マネージメントを学ばなくては将来当社でもライン職として残るのは難しくなる。

いまや、ネット環境が整備され、我々のビジネスの源泉だった「情報の格差」がなくなった。ある情報を独占できたから、そこに対価を払うビジネスが成り立ったわけだ。それが近時、情報が何時でも何処でも入手可能になった。賃貸契約に伴うトラブルや解決方法も瞬時に得ることができる。賃貸市場の変化も相場家賃も同じだ。借り手市場の中で、物件同士の競合も多発し、それを扱う業者の姿勢や知識も選定判断の一つになった、更に貸主側の情報も求められるようになった。

何処よりも安い賃料で、よい環境下で、品質もよく、理解のある貸主の物件を求めるようになった。業者にもどれだけの商品説明ができるか、接客マナー、建築、設備、法的スキルがあるか、更に持ち家と賃貸とどちらが有利か、等幅広い知識とセールストークが必要になってきた。それも年々深く広いものになっている。賃貸市場の変化と同時に我々も入居者を越える知識と情報を持たなくてはビジネスが成り立たなくなってきた。もはや、この業界で生きていくには、宅建レベルの資格では相手にされなくなっているのだ。宅建未取得者は来年には合格へ、取得者は更なる上級資格へチャレンジしてもらいたい。

社長 三戸部 啓之