206号-2014.9.25

[ 2014.9.25. ]

206号-2014.9.25

ほう・れん・そう」の徹底はいつでも何処でも言い古されている組織の要諦だ。
しかし、何処でも何時でも悩む問題だ。経験の長短を問わずできないことが多い。
組織で動いている以上、社内の様々な部署との関係もあるし、所属する上司との関係もある。
一人で動いているわけでもない。状況の変化に応じた関連部署や上司の指示や動きも重要になってくる。会社という組織の一員として組織責任を問われるからだ、ということを認識すれば理解できる。
裏を返せば●●君ではなく、●●会社の●●君として見られているからだ。結果、民法の事業者責任を負わせることにもなる。

業務において担当する仕事の成果をベストに導く為には、関連部署の英知を動員させなくてはならない。変化する状況判断も担当者一人では片面的だが、関係する第三者が関与することにより、多面的になる。リスク予測や軌道修正も適宜に行い予期する結果を確実に実現することができる。失敗リスクも減り、たとえ失敗しても多面的な検証ができ組織の知的財産として蓄積できる。経営トップとしてもこのようなケースでは、あらかじめ予測した経営リスクとして認めることができる。当然組織責任は経営トップが負うということになり違和感もない。

しかし、そのように組織的に動かなかった場合は、個人に責任を帰することになる。
勿論内部的な問題としてだが、民法の求償権の考え方に近い。
組織で個人責任を問われるとは、権限の逸脱、命令無視・違反だが、その重要な判断要素は先の「報告・連絡・相談」があったかどうかである。
ベテランや優績社員になるほど、この重要な基本動作を忘れがちになる。「俺の仕事が課・部を食わせているのだ!」「俺の判断のほうが上司より正確だ!」とばかりに無視することが多い。
さらに一々面倒くさい、こんな細かいことは良いだろうと独善的に判断する。
特にプライドの高い社員は要注意だ。プライドの高い社員は自分の得意分野でしか他人と比較しないから、それを自分の強さや能力の高さと勘違いする。上から目線で物事を見るから、真摯な指摘にも素直な姿勢になれない。素直な姿勢がないから、失敗にも自己弁護や他責になってしまう。
言い訳が先になってしまうのだ。そこには原因究明の姿勢がない。自己責任の姿勢がない。
要するに「学びがない」から、同じ失敗を繰り返すことにもつながり、チーム内でも孤立する。
結果、同じような社員同士で「傷をなめあう」ことにもなる。そこでも会話は「俺たちは勝ち組だ、しかしその能力を会社が認めない! なんと言うくだらない会社だ、こんな会社はいつか辞めてやる!」とはかない希望を吐露するしかない。規模の大小を問わず、経営者の評価は同じだ。社員には、経験や力量に応じたパフォーマンスを求めるものだ。組織の一員としてのルールやマナーがなければ評価は低い。その基本は報告・連絡・相談ということだ。
しかし単純に「報告・連絡・相談」があれば良いと言うことではない。
まず「時機を失しない」という事が肝要だ。
判断を求めるということは、上司に判断をさせる時間的余裕を与えなければならない。
往々にして、前触れもなく「これこれ・・なのでどうしたらよいでしょうか?」とくれば、超人でもない限り、的確な判断は難しい。ビジネスマナーとしても判断するに値する資料や状況を事前に説明するか、資料の提示が当たり前だ。そこで不足なところや説明を要するところを、予め上司の質問を踏まえておくことが必要になる。案件にもよるが、最低3日前には相談することだ。

状況が変化すればその都度連絡する必要がある。そのタイミングを失すれば間違った指示も出かねない。だから担当者は顧客やビジネス環境の変化に敏感でなければならない。よく言われることだが「顧客の前では自信家で、玄関を出たら臆病になれ!」ば、変化は感知できる。
ダメ営業や温室に入った内勤は「あの時は・・・・だったんですけど!」と自己弁護に終始する。
専門漁師のように、釣りに没頭するのではなく、常に海流や風の変化、雲の動きを見て、天候の急変に対処するよう心がけなければいけない。潮の動きで漁場を移動しなければ良い漁師とは言われない。そこには絶えず顧客目線が必要だ。顧客の動きに合わせる必要もある。顧客の動きに合わせたアドバイスやプレゼンが必要になる。顧客の変化を見逃さないことだ。それには絶えず接触する必要がある。ビジネスでよく言われる購入曲線がある。時間が経つにつれて購買意欲が減少してくるというものだ。色々な雑音が入り自分の決断が正しかったのか、先に延ばしたほうが良いのではないか、という迷いが出てくる。だから既成事実をあえて作る強引な営業も出てくるし、「返報性の原理」を活用した営業手法も出てくる。申込書の記載や手付け金の受領、招待旅行や飲食の接待などがそれに該当する。判断には主権者と副主権者がいる。主権者がご主人であったり奥様であったり、息子であったり、おじいちゃんであったりする。その家庭に入らないとその力関係は不明だ。さらに利害関係者の明確な反対行動を防止する必要がある。
キャンセルの多い社員はこの辺の情報が弱い、主権者でない方に決断を迫っても契約には至らないし、その熱意に負けて承認しても後日覆させられることになる。そういう事実も大切な報告なのだ。その方が何を言ったのか、副主権者の方がどう反応したのか、も重要な報告なのだ。
意思決定も含めた判断環境の把握は必須ということになる。
報告の順番も問題だ。
報告⇒連絡⇒相談⇒報告が一般的な時系列ステップになる。上司から仕事を与えられた場合は、相談(何時までに、どのように・・いくらで、成果は5W2H1Gという)⇒連絡⇒報告になる。
ビジネスシーンでは全てが時間的制約の下にある。学校では10時間かけて完成したものと、100時間かけて完成したものは同じ100点になるが、実社会では100時間かけたものは成果が同じでも評価は相当低い。90時間で他のことができるからだ。彼は生産性が低いと判断され、昇進にも影響する。だからビジネスでは成果=品質(Q)×価格(C)×納期(D)になりその一要素がかけても評価はゼロになる厳しい世界だ。最初のステップとして「相談=相手の意思確認」が重要に成るわけだ。ゴール(納期)を設定し、マイルストーン毎にチェックを入れ変化を報告することになる。

さらに、その中身の問題もある。当社は「アーバンに頼んでよかった」を社是とし顧客満足度の指標にしている。会社全体として全ての業務が「これが●●さんにとって最適か?」との判断が前提になる。その為には経験に応じて「相談・・・・」が必要になる。実務では「ほうれんそう」ではなく「そうれんほう」がより間違いがない。ゴールを予定したスケジュールを相談し、時系列的な状況の変化を連絡し、すり合わせをし、指示を受け、結果を報告する。そこでは担当者の個人的なバイアスをかけずに事実のみを連絡することだ。上司との相談の中で担当者の意見を言うことだ。
最後にこの簡単な事ができない理由として組織の閉鎖性とヒエラルキーが指摘される。「報告すれば失敗は不問に付す!」「挑戦的な失敗は人事考課でプラスの評価にする!」そうした企業が挑戦的で革新的だといわれる所以だ。「ほうれんそう」も経験と役職によりその内容も異なる。上位の視点を持ったモノが要求される。最後は「自分が経営者だったらどう判断するのか?」という訓練が自分のスキルを鍛える事になる。

社長 三戸部啓之