178号-2012.5.25

[ 2012.5.29. ]

178号-2012.5.25

「仲介件数が伸び悩んでいる」「来店が減っている」というのは一般的な業界での話しだ。
当社でも結果的には前年比110%の結果は出ている。だから良いのではない。
この結果を問題視しなくてはならない。

なぜならお客様から頂戴した「管理受託戸数」の伸び率に仲介件数が比例していないからだ。
つまり我々のミッションは、「期初の空室戸数+期中の新規受託管理戸数+期中の退去戸数」×0.975だからだ。「0.975」とは不動産賃貸管理業界での指標とされる「目標入居率」の事だ。期初~期末の合計対象戸数が1000戸あれば期末空室在庫は25戸しか認められない。中堅賃貸管理会社の店舗当たりの6ヶ月間の平均仲介件数は225件とされ、通常一店舗当たりの賃貸管理戸数は1000戸で、平均入居期間は37ヶ月だから半期で163戸の空室が発生する事になる。先のガイドラインから言えば期末残戸数は4戸しか認められない。仲介必達件数は159件になり、通常の市場価値のある賃貸物件ならば余力すら考えられる規模だ。

だが平均仲介件数225件の中には他社の物件もある合計だから、先物(他社管理物件)仲介率40%(業界平均)から見ると自社管理物件の半期仲介件数は90戸で、残念ながら73戸が期末を超すことになる。結果的に期末入居率は92.7%とガイドラインには程遠い。
この対策は自社付率をあげるか、自社物仲介率を上げるしかない。

仲介社員にあっては、来店客数の増加 ⇒ 来店案内率(来店客をいかに物件案内に持っていくか) ⇒ 案内申込率(案内した顧客をいかに申込させるか) ⇒ 申込契約率(申し込んだ顧客のキャンセルをいかに防止するか)がチェックポイントになる。
共通項は「来店客のヒアリングスキル(いかに顧客の潜在ニーズを引出し、マッチングミスをなくす力)」と「クロージングスキル(仲介営業社員の思惑通りに物件誘導する力)」だ。
どれも一朝一夕にできるのもではない。経営者の忍耐とたゆまざる人的教育投資が成否を決定する。採用時に適性を見るが内勤系はまず間違えない。営業系は殆ど当初の期待と相違する。意外と内勤評価レベルで不採用としても、入社後素晴らしい成績を残す社員もいる。
有名大学卒で回転も速く理解力もあり能力もあるが、鳴かず飛ばずの社員もいる。
一時言われた体育会系もかつてほどでもない。サービス業では従来の採用基準が機能していないことが多い。当社では新卒採用を3年前から再開したのは、業界の色に染まったものを洗いなおすのはほとんど不可能に近いし、その前歴が生かされていないケースが多く本人のプライドと当社のようなゲリラ戦力を求める会社とのミスマッチが多発するからだ。
新卒は採用した以上、当社の雇用責任も大きく徹底的に鍛える責任もあり、将来大化けする期待もある。何しろ新鮮だ。自分の子を育てるのは親でも難しいのに他人ならなお更だが、これが大きな差別化になる。
さて案内の事前準備段階として、物件の確認、環境、清掃、異臭のチェック、市場調査は勿論の事、問い合わせ件数が多くなるような物件広告、ネットの掲載に気を配る必要がある。
また社内では当社の例でいえば10日毎に「問い合わせ反響数」「問い合わせ経路」の結果を踏まえ、店ごとに毎回次週の方針を立てる。特に2~3月のトップシーズンは、社員総出でこのサイクルを回すので、休日返上の過酷な労働条件となりピリピリと緊張した雰囲気になってくる。ネットでの競合は通常60件、検討の土俵に上るのは5件、実際に不動産会社に来店するか問い合わせするのが3件しかないので、まずもって「物件の商品化」がすべてを決定する。
「物件の商品化」とは、一言でいえば「同じ立地条件、同等設備仕様なら同じ賃料条件」だという事である。付加価値とは建築会社が言うように「いい設備や仕様」があれば賃料が高くとも良いのではない。賃料が相場より高ければ「付加価値」ではなく、賃料に見合う仕様だから当然差別化はできない。同じ賃料であって他にない物があるから「差別化の対象としての付加価値」があるという。この間違いと錯覚が賃貸シーズンに足かせになって結局期末空室となって貸主に戻ってくる。
店舗などの商業物件と違い賃貸物件は「他より安い」事が最大のポイントである。
会社や営業社員の努力では解決できない、なぜなら現在来店者数の90%以上がネット来店者で、営業社員が待っている土俵に乗る前に勝負が決しているからだ。今後は不動産会社の場所や立地条件もあまり効果がないかもしれない。
一般的に大手を含めて仲介会社の一店舗当たりの年間仲介件数は450~500件であり、全国ネットの大手仲介会社の総仲介件数は10~20万件だが、出店数で見れば地場の中堅仲介会社と変わらない。総件数の多寡ではなくそのエリアで何件の仲介件数があるかが重要になる。一般的平均値で言えば当社でもその基準から言えばほぼ合格点になる。
社内的な管理手法としては、仲介件数が馴染みやすいし、明確なのでこれを採用しているが、貸主である委託者側から見ると的外れの視点といえる。
先の例では73戸の空室を抱えた夫々のオーナーからは何の評価も得られないからだ。
ここに組織的なミスマッチが起こり、お互いに不信感が増すというわけだ。
特に寸暇を惜しんで休まず行動している社員もいるのだから一層深刻なものになる。
一つの部署で「入居者:借主」と「オーナー:貸主」双方の利害を満足させることはできない。この定理を忘れかけていた。仲介件数のUPが貸主の顧客満足度UPと考えていた。しかし、仲介現場サイドに立てば「店ごとの損益達成⇔仲介件数UP⇔決めやすい物件⇔入居者の要望に沿う物件⇔当社管理物件である必要がない⇔入居率0.975は無関係」とならざるを得ない。更にこんなこともあった。入居者サイドに立てば「何でも直ぐ聞いてくれる」「賃料等の条件を緩和してくれる」「入居条件にうるさくない」貸主がベストだ。だから交渉のしやすい他社の物件が扱いやすくなるし、仲介件数も伸びることになる。これでは当社が管理会社であるイメージが根底から崩れてしまう。仲介部門の社員には案内~申込~審査までを担当させ、契約~入居~退去までを他部門にさせることで部門の専業化を図り効率化と生産性を向上する思惑が、全く違った方向へ進んでしまった。
そこで昨年8月1日より当社全額出資のサブリースと管理専門子会社「アーバン企画開発管理:以後UR管理]を作り、当社の仲介部門(以後アーバンSHOP)を他業者と同列に置き仲介を競い合わせようとした。空室物件も指定期日までに仲介できなかったら、その物件を取り上げ他のアーバンSHOPに担当替えさせるとか、他業者に依頼するとかにした。
仲介専門店舗とUR管理が空室斡旋について緊張関係を保つように機構改革したわけである。
まだ12月正式稼働で動き出して幾ばくも無いが、今期5月末終了時点で問題を抽出し当初の思惑通り機能しているか、空室戸数が減少したのかを確認するつもりである。   
社長 三戸部 啓之