[ 2017.8.25. ]
241号-2017.8.25
低迷する売り上げを伸ばしたい。けれど、販促に使える予算はない・・そんな時、状況を打破する鍵となるのは、“アイディア”だ。「金がなければ知恵を出せ。知恵がなければ汗を出せ」といったのは、元禄時代の作家、井原西鶴だが、この教えは400年以上経った今でも十分通じる。
これを常に言い続けていたのは、パナソニック(松下電器産業)の松下幸之助翁だ。翁の言葉はさらに続く。「できないなら去れ!」だ。ここに大事な組織上の要諦がある。「知恵があっても、まず汗を出しなさい、本当の知恵はその汗の中から生まれてくるものですよ」ということらしい。机上で考えるのではなく、行動で示せという事を翁は言っている。
トヨタでも「現場主義」が有名だ。現場からの改善は「アンドン方式」「カイゼン」と国際ビジネス用語にもなっている。
往々にして頭の良い社員は、まずその明晰な頭脳で結果を予測する。そこではリスク忌避が先に来るからこれ以上進まない。100%に近い成果を求めるからだが、世の中、その程度の頭脳で予測できるほど単純ではない。現場を知らないから現状は完全に把握し切れていない。そこでの判断は「・・・べきだ」論になり実態から益々乖離してくる
戦前、優秀な頭脳集団といわれた大本営参謀の指揮判断を見ればそれを裏付けられる。しかも、その判断で終戦が遅れ、死ななくてもよい国民が100万人単位で発生した悲しい事実があった。
世界のホンダでも創業者の本田宗一郎は言っている。「人は座ったり寝ている分には倒れることがないが、何かをやろうとして立って歩いたり、駆け出したりすれば、石に躓いてひっくり返ったり、並木に頭をぶつけることもある。だが、例え頭にコブを作っても、膝小僧を擦りむいても、座ったり寝転がったりしている連中よりも少なくとも前進がある」これが独創的なクルマ作りを支えている。
この知恵と行動という点で有名な事例がある。
高知市の惣菜販売業『デリンベイク』は、市場拡大をめざしコロッケのネット通販に参入したものの、売り上げがまったくない日が3カ月も続いた。苦しい状況を打破しようと経営者の細川泰伸氏が思いついたのが、「365種類のコロッケ」を開発するというもの。「1年365日、種類の違うコロッケが食べられる」という発想だ。この企画により、1個1250円もする「松茸のクリームコロッケ」や「チョコレートコロッケ」などユニークな商品を開発したところ、マスコミの注目するところとなり、テレビや雑誌など、さまざまな媒体で採り上げられた。その結果、いまでは、ネット通販だけで月額300万円売り上げる人気店になった。
一方、社長自らが“サンドイッチマン”になることで、店の知名度を高めている例もある。
京都の家具店『家具の宝島』の経営者、滝下信夫氏は、自らが“宝島”のバイキングをイメージした『のぶちゃんマン』のいで立ちで店頭やチラシに登場する。ゲジゲジ眉毛に真っ赤なホッペ、派手なコスチュームはメディアやお客の注目を集め、いまや京都のみならず関西ではちょっとした有名人らしい。サンドイッチマンになるキッカケはテレビショッピングへの出演。「家具というありふれた商材を売るには、何かアピールできるものが必要」と、女装して番組に出たところ、これが大ウケし、用意した商品はあっという間に売り切れた。これを機に、自らが店のキャラクターになり、率先して販促に努めるようになったところ、売り上げも拡大、当初2店舗だった店舗数は、現在、リサイクル業態も含め、18店舗に増えた。
これ等は自称エリートでは絶対にできない!自分の身の回りでも、ちょっと工夫を凝らせばアイディアの種は転がっている。常に現状を踏まえ「どうしたら良いか?」を考えていれば、何気なく見逃している事実もヒントになる例だ。
科学者パスツールの言葉で「偶然は、準備のできていない人を助けない」という至言もある。
経営者ばかりではない、サラリーマンでも知恵と工夫で大きな売り上げを上げる人はいる。
日本旅行西日本営業本部の販売部マネージャー、平田進也氏は、ひとりで年間5億円を売り上げるというカリスマ添乗員だ。「平田進也と行くツアー」は、発売するとすぐに売り切れるほどの人気ぶりで、 ツアー参加者からなるファンクラブ『進子ちゃん倶楽部』は会員数2万人に達する勢いだというから恐れ入る。普通の添乗をしていただけではこうはいかない。
平田氏のツアーはサービス心が溢れている。たとえば、ドラマ“冬のソナタ”のヒットを受け、旅行会社はこぞって“冬ソナツアー”を企画した。似たりよったりのツアーがひしめくなか、平田氏のツアーはひと味ちがった。平田氏自らが“ヨン様”に扮して参加者をエスコートしたのだ。
時には、体を張った演出もする。オーストラリアのツアーでは、羊の着ぐるみ姿で参加者を迎えようとしたところ、牧羊犬に追われ、あちこち噛まれるという悲惨な目にもあった。普通ならそこまでしなくてもと考える。しかし、平田氏は、「そこまでやったからこそ、お客さまに“ここまでしてもろうて、ありがとう”と言っていただける」と考える。平田氏は、「サービスは無尽蔵」だという。知恵も同じこと。大金をかけずとも知恵と工夫により、顧客の満足度を高めたり、売り上げを伸ばしたりといったことは可能だ。
《参考資料:「出る杭も5億稼げば打たれない!」平田進也著(小学館)》
各種規制の撤廃で、成熟産業といわれている分野でも新たなサービスが続々と生まれた。顧客満足を重視した方向に、商品やサービスが見直されているわけである。ところが、このように新たな動きが始まっているのに、それに気付かないリーダー、社員が多い。
そもそも、規制は何の為にあったのか?既存の事業者の利益を守る為である。そこでは、消費者の利益は二の次、三の次であり、既に構築された枠組みの中だけで仕事すれば結果を出すことができた。其の時代の意識を引きずり、頭の中の規制の枠が新たな状況への対応を邪魔しているのだ。「そんなことはウチの仕事じゃない」「そこまでやる必要がない」こんな言い訳を並べて、従来の枠組みの中に逃げ込んでしまう。
「無理なことは無理だろう」という反論が聞こえてきそうだが、「餅屋に車を売れ!」というお客様がいるだろうか?「無理なこと」が本当に無理なことなのかを、もう一度考え直してみる必要がある。顧客の立場から見直してみると、決して無理ではない場合が多い。「できない」「やれない」「したくない」といった意識の規制を、この際、きれいサッパリ捨ててしまってはドウだろう。
限られた市場を奪い合う時代に、自分達の都合を振りかざして生き残ることはできない。「できません」と断る前に、どうすれば相手の要求に近づけるかを考えてほしい。
無理な要求を嫌えば顧客が逃げていく。それが淘汰の時代の厳しい現実だと、リーダーや社員は後輩社員に知らしめるべきだ。
無理と考えていたサービスが提供できるようになることは、すなわち、他社との差別化である。生き残る為には、顧客の無理を実現する為に努力するべきだ。無理な注文が来たら、新しいビジネスチャンス到来と思う!前向きさが大事だ。企業が顧客の要求を規制することはできない。供給側の論理を捨てて、むしろ顧客のわがままに積極的に挑戦するべきだ。
人口頭脳や生産性向上による雇用が変化するのは間違いがない。
今後10~20年の間に今ある仕事の機械による代替や自動化は米国で47%(英オックスフォード大学の研究者による)英国でも35%(デトロイト英国法人の推計)に達する。テクノロジーの発展により以前とは比較にならないほど情報やコミュニケーションへの可能性が開かれている。それを駆使して自分の資産を増やし、マーケットでの価値を揚げた人達を獲得し、自社の目指す方向に向けて活用できるか否かが、今後の企業の競争力を左右する。「自分が分かる事だけで勝負しようとする」時代は終わっている(一橋大学 石倉名誉教授)過去の成功体験にすがっている社員も同じだ。企業だけでなくそこで雇用される社員にも変化が求められているのだ。
「頭は何のためにあるんだ!」使うためです。違う!「下げるためだ!」ビジネスにおいて頭を下げる状況は、依頼と謝罪とお礼の3つ!「お願いします!」「すみませんでした!」「ありがとうございました!」だ。これがキチンとできない社員はまだ多い。まずこの辺のレベルから始めてみよう。ただ乗っかっているだけの頭をもっと有効に使おう。それができたら中身を詰め込もう!「使うのはそれからだ!」我々の資源は「知識と経験だ」頭と行動が連動して初めてお客様に評価される。使わない機器は経年劣化する。発明王のエジソンでも脳細胞の1%も使っていないという。我々凡人はもっと酷使してもキャパは十分だ。ただの未使用で腐らすのではもったいない。
お飾りだけで通用するのは護摩札だけだ!
社長 三戸部 啓之