賃貸市場の変化について
アーバンレポート 第303号2024年9月発行
コロナ禍以降、日本の社会全体で様々な変化がありました。私どもが従事する不動産賃貸市場も大きな影響を受けた1つです。特に大きな変化としては、主に3つ上げられると考えています。
1.相場の変化
コロナ禍以降、首都圏の賃貸向け物件の賃料が上昇し続けています。特に東京23区は上昇率が群を抜いております。LIFULL HOME’Sのマーケットレポートによると、ファミリー向け物件の掲載平均賃料が2023年3月~2024年3月の1年間で3.2万円(昨年対比117.8%)の上昇となっております。またシングル向け物件も2024年3月には掲載平均賃料が初めて10万円を超え、10万1,232円(昨年対比108%)となっております。
また神奈川県は東京23区、埼玉県に次ぐ賃料の上昇率を見せており、2023年3月~2024年3月の掲載平均賃料はファミリー向けで2023年3月の93,202円から2024年3月で103,065円と9,863円(昨年対比110%)の上昇となっており、シングル向けでは60,607円から62,687円と2,080円(昨年対比103.4%)の上昇となっております。特に弊社が得意とする川崎市・横浜市のエリアでは、ファミリー向け物件の掲載平均賃料は119,948円(昨年対比111.6%)と大幅な上昇を記録しております。
賃料上昇の主な要因としては、物価高並びに人件費高騰による建築コストの上昇による新築物件の募集家賃上昇、リモートワークなどの普及による都心部から神奈川県への居住者の流入並びに、都心部の賃料上昇に伴うものだと考えられます。
こうしてみると、どこもかしこも賃料が上がっているように感じられますが、三大首都圏内でも賃料上昇に頭打ちを見せているエリアもあります。三大首都圏の一つ兵庫県では、2023年3月~2024年3月の1年間でみれば掲載平均賃料は昨年対比100.9%と微増ではありますが、2024年1月~3月の掲載平均賃料は続落しています。このように、コロナ禍以降は人気エリアとそうでないエリアの2極化が進んでいると考えられます。
2.人の変化
上記で述べた内容とも類似しますが、賃貸物件を探す人の層に変化が見られます。コロナ禍以前は、都内へのアクセスが良い沿線の急行停車駅に人気が集中しておりましたが、コロナ禍以降は、アクセス重視の方より周辺環境やお買い物施設の充実さや、子育て環境など住環境を重視してお探しされる方がより増えております。特に元々都心部の会社までのアクセスが良い場所に住まわれていた方が、リモートワークの普及により出勤日数の減少やそもそもフルリモートにより出勤をするということ自体がなくなり「会社までのアクセスが良い」というポイントの優先順位が著しく下がったことで、【住環境が良いところ】の優先順位が上がり、都内と比べるとまだまだ安くて住みやすい神奈川県に人口流入していると考えられます。
またこの東京23区からの住み替えの方は、今までの神奈川県の相場との比較ではなく、現在の東京23区の賃料と比較されて物件を見ているということもあり、従来(コロナ禍以前)の賃料相場から神奈川県にお住まいの方よりは、賃料上昇に対して寛容であると言えます。逆に言うと、神奈川県内において既存の物件から同エリア内での引越しを検討する方にとっては、同等の条件(広さ、立地、設備等)での住み替えを希望する場合、ほぼ確実に賃料アップになってしまいます。それ相応の事情が無いと住み替えされない方が増えているように感じます。実際に更新を機にお部屋の住み替えを検討されているお客様で、過去と現在の賃料の差に驚かれて、結局住み替えせずに更新して住み続ける方も少なくありません。
ニーズについても変化がみられており、上記のリモートワークの影響もあり、【在宅ワーク】を行うスペースを求められるお客様が増えています。それに伴い探すお部屋のサイズ(間取り)に変化が出ております。従来では、新婚、カップルなどの新しく同棲される方は2名入居で1LDKを探す方が多数を占めていましたが、現在では1LDKでは在宅ワークのスペースが無いため、2名入居で2LDK以上を希望される方が非常に増えてきております。中には2名様とも在宅ワークの為、3部屋欲しいという方もいらっしゃるので、従来の間取り感よりプラス1部屋多く希望されているという感覚があります。単身者様でも、上記と同様の理由で、寝室と在宅ワークスペースを分けたいという理由から1名入居で1LDKを希望する方も多くなっております。また働き方改革やリモートワークの普及により、在宅時間が増えたことによって、住宅に掛けるコストを引き上げている方が多いというのもこの変化の要因の一つだと考えます。
3.手続きの変化
不動産賃貸契約というと従来は、まず来店いただき申込書を書いてもらい、審査が通れば、契約手続きの為また来店して重要事項説明を受け、契約金などの決済の後、また来店して鍵の引き渡しを受けるというのが、一連の流れだったかと思います。ただ昨今では来店してもらうことなく、申込から契約手続きまでを行えるようになりました。インターネット上で申込手続きを行ってもらい、契約手続きも電子契約とIT重説(テレビ電話のような形でウェブを介しての対面で重要事項説明書の読み合わせを行うこと)が出来るようになり、契約書類を紙で発行する手間や来店いただく時間なども割愛でき、お客様にとっても不動産業者にとっても効率化が進んでおります。特にご遠方からのご転居の方や海外在住でどうしてもお越しいただくことが難しいお客様には大変有難いと好評で、「来店のスケジュール調整が無くて助か
った」や「帰国前にお部屋の契約が完了しているということは精神的にとても安心できた」などのお声も頂戴しております。ただ電子契約につきましては、現在弊社では一部の物件でしか対応が出来ていないので、その点は今後の課題かと考えております。
また物件案内の際もオンライン内覧やご来店いただく代わりにオンラインでの打合せなども需要が増えてきており、今後はよりオンラインや電子での対応が求められていくと強く感じております。
以上のように、コロナ禍以降の変化についてまとめさせていただきました。従来の方法を受け継いでいくというのも非常に重要な半面、こうした新しいニーズや変化の波にしっかり乗っていくことで、新しい層のお客様に対してもしっかりとフォローしていけるような体制を整え、今後とも皆様のお力になれるように励んで参ります。
賃貸営業部 港北ニュータウン店 大小島 真史